宝石には、光で色が薄くなる石と、ほとんど変わらない石があります。色が変わったと感じたときは、退色のほかに、光源で違って見えている、汚れや膜が付いた・はがれた、という場合もあります。石の種類が分かれば、どれに当たるかの見当が付きます。
GIA(米国宝石学会)は、手入れの案内で光と熱は、長い時間・過度にかかると、アメシスト・クンツァイト・トパーズ・貝のカメオなどを色あせさせたり傷めたりすると書いています。長い時間、強い光や熱に当て続けないことが、色あせの予防になります。
退色しやすい石・しにくい石
石ごとの説明を、色あせのしやすさで4つに分けると次のとおりです。
| 分け方 | 主な石 |
|---|---|
| 光で退色することがある | クンツァイト・一部のアメジスト・黄〜茶のトパーズ |
| 色が安定している | ルビー・サファイア・モルガナイト |
| 光源で違って見える | アレキサンドライト・タンザナイト |
| 処理で色が落ちることがある | 染色した石・膜をかけた石 |
※どれもGIAの石ごとの説明による。同じ石でも、産地や処理で違うことがあります。
光で退色することがある石
クンツァイトは、GIAによると熱や強い光に長くさらされると退色することがある石です。処理した石も同じで、照射・加熱で色を整えたクンツァイトも、天然の色のものと同じく熱や光で退色することがあるとされています。
アメジストについて、GIAは一部のアメジストは、強い光に長くさらすと退色するとしています。トパーズは色で違い、GIAは黄〜茶色のトパーズは、熱や日光に長くさらすと色あせるおそれがあるとしています。
照射(放射線を当てて色を変える処理)をした石の一部も、色が長持ちしません。GIAは、照射で色を付けたベリル・スポジュメン(クンツァイトの仲間)は色が長持ちせず、明るい光で退色しやすいと書いています。
色が安定している石
ルビーとサファイアは、GIAによると通常の着用では安定していて、熱・光・一般的な化学薬品に耐性がある石です。モルガナイトは、GIAによると光にさらしても色は安定していて、退色しない(熱は避ける)とされています。
ローズクォーツは、GIAによると光や熱にさらしても、ふつうは安定している石です。ただし、GIAは産地によっては自然光で薄くなるローズクォーツがあり、その色は照射で戻せるとされるとも書いています。
色が変わったのは退色か、光源か、汚れか
色が変わったと感じても、石の色そのものは変わっていないことがあります。まず、見ている光が前と同じかを確かめます。
アレキサンドライトは、GIAによると日光や蛍光灯ではグリーン、ランプやろうそくの白熱光では茶〜紫がかった赤に見える石です。部屋の照明が変わっただけで、別の色に見えます。
タンザナイトは、GIAによると昼光のような冷たい光で青が、白熱灯のような温かい光ですみれ色・紫が強く見える石です。見る向きでも色が変わり、ある工房はどの方向を正面に向けて留めるかで、完成後の色の印象が大きく変わると書いています。留め直したあとに色が違って見えるのは、向きが変わったからのこともあります。
サファイアにも、光で色が揺れる石があります。GIAは、ピンクサファイアの中には強い光でオレンジ味を帯びるものがあり、色の安定性試験でその不安定なオレンジは消えてピンクに戻ると書いています。GIAによると、色が不安定なサファイアの多くは加熱していない石です。
手元の品で何ができるかは、写真を送って工房に相談できます。
処理した石の色落ち

処理で色を付けた石は、処理の種類によって色が落ちることがあります。
処理の種類と色が変わるきっかけ
- ①染色染料で色を付ける溶剤・日光の紫外線で落ちることがある
- ②膜(コーティング)表面に金属の膜研磨剤や磨きで取れる
- ③オイル・樹脂の充填割れに埋める光や化学薬品で見た目が変わる
- ④照射放射線で色を変える石によって安定するものと退色するものがある
染色について、GIAは染色した石は、アルコールやアセトンなどの溶剤に触れると染料が落ちることが多いと書き、染料の中には日光の紫外線で不安定になり、時間とともに色あせるものがあるとしています。トルコ石は、GIAによると化学薬品・化粧品、皮脂や汗でも変色するおそれがある石です。珊瑚について、GIAは染色した珊瑚は長く日光に当てると退色することがあると書いています。
膜をかけた石について、GIAはミスティックトパーズなどの金属酸化物の膜は、研磨剤やバフで取れてしまうと書いています。エメラルドについては、エメラルドの割れに入れたオイルや樹脂は、光や化学薬品で見た目が変わったり劣化したりすることがあるとしています。
照射した石がすべて退色するわけではありません。GIAは、照射で色を付けたブルートパーズ・ダイヤモンド・クォーツは、高温にさらさなければ色はとても安定しやすいと書いています。処理の扱い方は、トルコ石ならターコイズの指輪の修理、翡翠なら翡翠の指輪・帯留めのリフォームにあります。
戻せるもの・戻せないもの
光で退色した色は、洗っても磨いても戻りません。光源や汚れが理由なら、光を変える・洗うだけで元の色に見えます。
戻せる・元から変わっていない
- 光源で違って見えていた
- 裏側の汚れ・油膜で暗く見えていた
- 一部のサファイアの、光で揺れる色
家では戻せない
- 光で退色したクンツァイトやアメジスト
- 落ちた染料・はがれた膜
- 照射で戻す方法は、処理した石になる
ローズクォーツのように、照射で色を戻せるとされる石もあります。ただ、それは石に処理を加えることで、戻した石は処理した石として扱われます。
作り替え・修理の熱で色が変わる石
色が気になる石で作り替えやサイズ直しをするときは、熱の扱いを先に決めます。GIAは、ワックスや樹脂を含浸した石には熱をかけないよう注意が要ると書いています。
アメジストは、GIAによると急な温度変化でひびが入ることがあり、熱にさらすのは避けるとされています。トルコ石も、GIAによると高温で変色・表面損傷のおそれがあります。
色を濃く見せる細工が、作り替えで分かることもあります。ある工房は、翡翠について枠に色を乗せて翡翠を濃く見せていた例があり、外して洗浄すると色がぐっと薄くなったと書いています。サイズ直しの熱・石外し・超音波洗浄が石ごとにどこまで大丈夫かは、宝石ごとの加工できる・できない一覧で確かめられます。
石の種類や処理の有無が分からないときは、鑑別で確かめられます。ある鑑別機関の料金表では、宝石鑑別書 5,500円(非会員・税込)です。
しまい方と着ける場面
色あせを防ぐなら、光と熱と薬品を避けます。
しまうときは、日の当たらない引き出しや箱に入れます。退色しやすい石は、日なたに長くいる日には着けない、と決めておくのも手です。
写真で分かること、現物で決まること
写真で分かるのは、退色か、光源か、汚れかの見当です。石の種類や処理の有無、入れ替えの有無は、現物と鑑別で決まります。
写真で分かること
- 前の写真と比べた、色の濃さの違い
- 裏側の汚れ・膜のはがれ
- 留め直しで石の向きが変わったか
現物で決まること
- 石の種類と、処理の有無
- 退色か、石が入れ替わったか
- 作り替えの熱に耐えられるか
色の変わり方の見当を付けたいなら、写真で相談できます。窓際の昼の光の下で、以前の写真と同じ向き・同じ光で撮り、2枚を並べて送ります。石の裏側と、枠の内側の刻印も撮り、「いつごろから、どこで保管していたか」を書き添えます。
今日やること
- 1同じ光で比べる窓際の昼の光で、前の写真と並べて見る
- 2洗ってから見るぬるま湯で裏側を洗い、汚れで暗く見えていないか確かめる
- 3並べた写真で相談する今と前の写真を同じ光で並べ、石の裏側と刻印も撮って相談する
