形見の時計をジュエリーにする方法は2つです。ケースや金属のベルトの金を溶かして指輪やペンダントにするか、文字盤ごと時計の形を残して首から下げるかです。どちらができるかは、裏蓋の刻印で決まります。
時計のどこが地金か

金の時計でも、全部が金ではありません。溶かして使えるのは、ケース(文字盤を囲む外側の枠)・金属のベルト・尾錠(ベルトの留め具)のうち、金でできた部分だけです。地金(じがね)は、金やプラチナの金属そのもののことです。
時計の買取店は、「金無垢(きんむく)」の時計をガラスやムーブメント以外の全てが金でできている時計と説明しています。
| 部品 | 溶かす材料になるか |
|---|---|
| ケース・裏蓋 | 刻印で決まる |
| 金属のベルト・尾錠 | 刻印で決まる |
| 革のベルト | ならない |
| ムーブメント(中の機械) | ならない |
| ガラス・文字盤・針 | ならない |
時計の刻印の場所は、ある買取店の説明では裏蓋や裏蓋の内側です。「18K」「750」の刻印は、どちらも18金を表すので、どちらかがあれば、その部品は18金です。ケースとベルトは別の素材のことがあるので、両方の刻印を確かめます。
宝飾品の表示のきまりでは、GF(Gold Filled)=張り合わせた金合金の質量比が20分の1以上の金張りとされています。金張りやめっきの時計は、溶かしても金の材料にはなりません。形のまま残す方法を選びます。
溶かせる金の重さをつかむ
溶かして使える金の重さは、時計全体の重さから、機械とガラスの重さを引いて見当をつけます。
- 時計全体の重さ(キッチンスケールで量る)
- 50g
- ムーブメントとガラス(仮に)
- 15g
※ 数字は計算の仕方を見せるための仮の値です。革のベルトの時計は、ベルトを外してから量ります。
ムーブメントの重さは、買取店の説明で機械式でおよそ10〜15g、クォーツ式で10g程度です。正確な重さは、ムーブメントやガラスを外して、実際の重さを量るときに分かります。重さと刻印が分かれば、地金の価値の目安計算で金としての目安の額を出せます。計算は重さ(g)×品位(千分率)÷1000×1gあたりの地金価格です。
3つの残し方
形見の時計の残し方は、溶かしてジュエリーにする、時計の形のまま首から下げる、時計のまま残す、の3つです。時計のどこを残したいかで選びます。
溶かして指輪・ペンダントに
- 父や祖父の金を毎日身に着けられる
- 文字盤・刻印・時計の形は残らない
- 金張り・めっきの時計ではできない
文字盤ごとペンダントに
- 時計の顔がそのまま残る
- 溶かさないので、金張りの時計でも形のまま下げられる
- 重く、大きくなりやすい
時計のまま残す
- 動かして使える・そのまましまっておける
- 動かすなら時計店での手入れが要る
時計の修理やオーバーホール(分解して掃除・調整すること)は、時計店の範囲です。ジュエリーの工房に頼めるのは、金の部分を溶かす・形を変える・金具を付ける作業です。
自分の品を何に作り替えられるかは、写真を送って工房に相談できます。
溶かして指輪やペンダントにする
金の時計を溶かして指輪にした公開例があります。ある宝飾店は、K18の時計を溶かして、太めの甲丸(断面が丸い)の指輪にした例を公開しています。加工代は加工代25,000円(税別・時計の地金を使用)で、地金代はかかっていません。これは他店の公開例で、同じ金額で作れるという意味ではありません。
時計に限らず、手持ちの地金を溶かして指輪1本を作る公開目安は、他店2件で6万円から10万円(税の表示なし)です。溶かした金を叩いて作るプレートのペンダントは、別の工房の公開目安で約2万円〜4万円前後(チェーン別)です。作り替えの値段が加工代・地金代・下取りでどう決まるかは、指輪のリフォームの値段で確かめられます。
溶かすと、地金の重さは少し減ります。減る分の見込みは、ある工房で総重量のおよそ10%、別の工房で完成重量に対しておおよそ10〜15%です。減り方の考え方と、鋳造(型に流す)・鍛造(叩いて作る)の違いは、指輪を溶かして作り直すで確かめられます。
時計を受けない店もあります。ある専門店は、ジュエリー以外の貴金属について時計・国内金貨以外は基本的に加工できるとしています。最初の問い合わせで「金の時計を溶かして指輪にできますか」と、時計であることを先に伝えてください。
文字盤とケースを残すペンダント
時計の顔を残したいなら、時計を首から下げるペンダントにします。このときは、時計として動かし続けるかどうかを先に決めます。
ある時計の工房は、動かし続けるなら作り替えた後も裏蓋を外して機械を取り出せるようにする、特殊な加工が必要としています。故障したときや定期的なオーバーホールのときに、裏蓋を開けて機械を調整する必要があるからです。動かなくてよいなら、文字盤と針は残し、機械は取り除く方法があります。同じ工房は、この方法だと加工費用が安くなり、仕上がりの重さもとても軽くなると説明しています。
| 選び方 | 中の機械 | 加工 |
|---|---|---|
| 動かし続ける | 残す | 裏蓋を開けられる形にする |
| 飾りとして残す | 外す | 費用が下がり、軽くなる |
父や祖父の男性用の時計は、首から下げると重く感じることがあります。同じ工房は、カフスやネクタイピンにする場合の説明で、男性用の腕時計はサイズが大きく、機械が入ったままでは重たすぎるとしています。毎日下げたいなら、機械を外して軽くする案も一緒に見積もってもらいます。
時計をペンダントにする料金を公開している店は、2026年10月25日の時点で見つかりませんでした。費用は、チェーンを通す金具(バチカン)を付ける代金と、チェーンの代金を足して考えます。他店の公開料金では、バチカンを付ける・替える作業が12店で3,000円から10,000円、チェーンだけの価格が4店で11,370円から42,900円です(いずれも税込・税別が混ざる)。時計の形に合わせて金具を作るかどうかで額が変わるので、見積もりで聞いてください。
動かない時計は残すか作り替えるか
動かない時計でも、動かして使いたい家族がいるなら、先に時計店で修理できるかを聞きます。修理できないと言われた時計や、身に着ける形を優先したい時計は、作り替えを考えます。ある宝飾店は、古い金時計は機械の修理ができないことが多いので、指輪にすることも選択肢になると書いています。
溶かす前に、時計としての値打ちを確かめてください。買取店は、金の時計について「時計としての価値」と「金の価値」を比べ、高いほうで査定するとしています。時計として値が付く品を溶かすと、その値打ちは戻りません。
迷うなら、溶かさずに文字盤ごと下げる案から考えてください。機械を外さずに残しておけば、後から時計店で直せるかを聞く道も残ります。
兄弟で分ける
1本の時計を兄弟で分けるなら、時計のまま1人が持つか、金を溶かして人数分の指輪やペンダントにするかを決めます。人数分に足りるかは、溶かせる金の重さで決まります。
時計ではありませんが、祖父の形見の金の品を家族の人数分の指輪にした公開例があります。ある工房は、K18のバックル99.97gを溶かして、姉・本人・母の3人分のおそろいの指輪を作りました。
- 持ち込んだ金の品
- K18のバックル99.97g
- 指輪3本に使った金
- 指輪3本分で7.37g(減る分を含む)
※ 工房は、余った地金をその時の金相場で買い取り、加工費を差し引いた額を振り込んだとのことです。
余った金を家族で持っておきたいなら、見積もりの段階で「余った地金は返してください」と伝えます。ケースと文字盤は時計の形のまま1人が持ち、金属のベルトを溶かしてほかの兄弟の指輪にする、という分け方も見積もりで聞けます。
形見の時計は、作り替える前に家族の了承をとります。ある工房は、遺品は相続財産にあたるため、家族に相談せずに作り替えるとトラブルの原因になると注意しています。誰が持つか、分けるかの決め方は形見のジュエリーをどうするかに、家族で話す順番があります。
写真で分かること、現物で決まること
写真で決まるのは、溶かせる時計かどうかと、方法の候補までです。金の量と金額は、現物を見てから決まります。
写真で分かること
- 裏蓋の刻印(K18・750か、GP・GF・RGPか)
- ベルトが金属か革か、尾錠の刻印
- 溶かすか、文字盤ごと下げるかの候補
現物で決まること
- 溶かせる金の重さ(機械とガラスを外して量る)
- ケースの内側の刻印と、金張りかどうかの最終の見分け
- 動かし続けられる時計か
裏蓋の刻印と、量りに載せた時計の重さの写真で写真を送って相談すると、溶かせる金の量の見当と、作れる指輪やペンダントの見積もりを聞けます。「溶かす案と、文字盤を残して下げる案の両方」と書き添えると、比べて決められます。
今日やること
- 1刻印を撮る裏蓋(内側に刻印があれば内側も)・ケースの横・ベルトの留め具の刻印を、文字が読めるように明るい所で撮る
- 2重さを量るキッチンスケールで時計全体を量り、地金の価値の目安計算で金としての目安を出す
- 3写真を送って相談する「父の形見のK18の時計を指輪かペンダントにしたいです。溶かして作る場合と、文字盤を残して下げる場合の税込の総額と、余った金の扱いを教えてください」と書き、文字盤の正面・裏蓋の刻印・量りに載せた重さの写真と一緒に送る
