パライバトルマリンは硬さ(モース硬度7〜7.5)では困りにくい石です。加工の前に確かめるのは、熱と、ひびを埋める処理(含浸)と、預けるときの補償の3つです。
硬さより、熱と洗浄機に気をつける
パライバトルマリンは、銅を含む青〜緑のトルマリンの呼び名です(宝石鑑別団体協議会・AGLの説明)。熱や洗浄機の注意は、トルマリンとして考えます。
宝石の研究機関GIAは、トルマリンについて、高温で色変化・熱衝撃でフラクチャーのおそれがあると書いています。超音波洗浄器(細かい振動で汚れを落とす機械)とスチームクリーナーは、勧めないとされています。
工房の作業でこれが関わるのは、次の3つです。
- サイズ直しで、バーナーの炎の熱が石に伝わる
- 留め直しで、ひびのある石に爪の力がかかる
- 仕上げで、洗浄機にかける
サイズ直しの熱で起きること
指輪のサイズ直しは、金属を切ってバーナーの炎でつなぐ作業です。石を付けたままだと、炎の熱が石にも伝わります。
熱が伝わると、色が変わることと、ひび(フラクチャー)が入ることが起きえます。照射(放射線を当てて色を変える処理)をした石について、GIAは、照射で変えた色は、熱や明るい光にさらすと褪せることがあるとしています。
石を外して直す
- 炎の熱が石にかからない
- 外す・留め直す代金が加わる
レーザーで直す
- 熱が狭い範囲にしか届かない
- 指輪の作りによっては使えない
石を外す方法について、ある宝飾店は熱に弱い石は一度外して保護しながら作業と説明しています。レーザーについて、ある工房は熱に弱い石はレーザーロー付けで対応可能と書いています。どちらにするかは、指輪の作りを見て決まります。
付けたまま炎で直すと言われたら、割れたときの扱いを先に聞きます。ある修理店は、石が留まったままのサイズ直しで石が破損しても補償しないと明記しています。サイズ直しの料金の組み立ては指輪のサイズ直しの料金と日数、断られたときの次の手は指輪のサイズ直しができないときで確かめられます。
手元の石でどんな形にできるかは、石と枠の写真を送って工房に相談できます。
含浸処理と鑑別書
パライバトルマリンには、ひびを目立たなくする処理(含浸)をした石がよく見られます。AGLは、透明度を良くするための透明剤の含浸は、近年頻度が高くなり、多くの石に見られると説明しています。鑑別書(石の種類と処理を調べた書類)を見れば、その記載があるかが分かります。
AGLは、研磨面に達するフラクチャー(ひび)があり、含浸の可能性を否定できない石には「通常、加熱および含浸が行われています。」と付記するとしています。鑑別書のコメント欄にこの一文があれば、その石は表面まで届くひびがあり、含浸しているかもしれない石です。
含浸した石は、熱と薬品に特に気をつけます。ある宝石店の解説では、含浸した石は高温や一部の薬品に弱く、含浸がはがれることがあるとしています。含浸したひびの部分から欠けたり割れたりすることがあるとも書いています。
鑑別書で見るところ(見本)数字は仮
- ①石の名前トルマリン など石の名前は、そのまま相談先に伝える
- ②コメント欄「通常、加熱および含浸〜」この一文があれば、炎と洗浄機を避けてほしいと頼む
- ③写真石の形と向き預けた石と、返ってきた石を見比べる材料にする
鑑別書が無い石は、含浸しているかが分かりません。「含浸しているものとして扱ってください」と伝えます。鑑別書を取るかどうかは、鑑定書と鑑別書の違いで決められます。
加熱済みの石なら、熱をかけてもよいか
加熱処理(色を変えるために熱を加える処理)をした石でも、作業の熱は避けるよう頼みます。GIAによると、トルマリンの主な処理は加熱・照射で、加熱処理で変えた色は安定していて、見分けられないとされています。つまり、手元の石が加熱済みかどうかは見て分かりません。
加熱済みと分かっている石でも安心はできません。先の宝石店は、加熱処理した石について加熱処理した石を再び加熱すると、色味や耐久性に悪い影響が出ることがあると書いています。これは処理としての再加熱の話ですが、サイズ直しの炎も熱であることは同じです。
高価な石を預けるときの補償
加工代より先に、作業中に壊れたときの補償を確かめます。補償の上限を決めている店があり、上限が石の値段に足りないことがあります。
ある専門店の加工承諾書では、作業中に壊れたときの補償は店が算出した一般的な市場価格の最大1割まで、上限30万円です。別の店は、ダイヤ以外の石は、損傷が起きても店が責任を負わないことを承諾してもらってから加工するとしています。
宅配で預けるなら、配送の保険の額も聞きます。ある宝飾店は発送から加工中・到着まで全工程で保険適用とし、ある工房は完成品の返送について「返送は運送保険付き(30万円まで)」と書いています。石の値段がこの額を超えるなら、上乗せの保険をかけられるかを聞きます。購入時の値段や鑑別書があれば、一緒に見せます。
留め直し・作り替えの費用の公開例

ここに並べる金額は、どれも他店が公式サイトに載せた料金や実例です。同じ金額で作れるという意味ではありません。
石を留め直す工賃は、中石(指輪の中心の石)の石留めの最低額を料金表に出している7店の中央値で4,000円です。ダイヤ・色石に共通の料金表からの集計で、石代は別、税込と税別の店が混ざります。高価な石は、承諾書の取り交わしや留め方の手間で上がることがあります。石を外す代金も別で、ある工房の案内では「石外しの料金は、石留め代の2〜5割」です。ぐらつきや爪の傷みから直すなら、爪・石座の修理に作業の分け方があります。
手持ちのパライバトルマリンを新しい指輪に作り替えた公開例は、確かめた3店で4件です。中央値は130,000円、幅は52,000円から250,000円でした。
| 公開例 | 内容 | 加工代 |
|---|---|---|
| 公開例1 | 2連を1連ずつに | 52,000円 |
| 公開例2 | 型を作って新しい指輪に | 85,000円 |
| 公開例3 | 持ち込みのデザインで | 175,000円 |
| 公開例4 | 小さなダイヤを足して留め直し | 250,000円 |
※ どれも税の表示なし。掲載したときの料金です。
額の差は作り方で出ています。2連を分けるだけの例が低く、周りに小さなダイヤ(メレ)を足した例や、金とプラチナを組み合わせた例が高くなっています。公開例3は、メレの代金が別にかかっています。今の地金を新しい指輪の材料に使えるかも、見積もりで聞きます。
ペンダントに作り替えた公開例は、同じ工房で60,000円(加工代金・下取分10,509円を引く前)と165,000円(加工代金・地金追加は別に8,085円)でした。石だけ(ルース)を持っていて指輪を作るなら、石を持ち込んで指輪を作るで流れを確かめられます。
写真と鑑別書で分かること、現物で決まること
写真と鑑別書で分かるのは、作業の方法の候補と費用の見当までです。ひびの深さと、石を外して大丈夫かは、現物を見てから決まります。
写真と鑑別書で分かること
- 留め方(爪か、金属で包む形か)
- 含浸の一文があるか
- 石を外すか、レーザーかの候補
現物で決まること
- ひびの深さと、表面に届いているか
- 爪の傷みと、外して留め直せるか
- 補償の条件が石に見合うか
指輪の正面・真横と、鑑別書のコメント欄を撮って写真を送って相談すると、作業の方法の候補と費用の見当を聞けます。ひびが深い石は、仕様によっては受けられない場合や、費用がかかる場合があります。
加工しないほうがいいケース
ふだんの汚れは、温かい石けん水で落とします。GIAも、洗うには温かい石けん水がいちばんよいとしています。家の超音波洗浄機には入れません。
今日やること
- 1鑑別書を探すコメント欄に「含浸」の一文があるかを見る
- 2指輪を撮る正面・真横・ひびや欠けが気になる所を、明るい所で撮る
- 3写真を送って相談する「パライバトルマリンの指輪を◯◯したいです。石は外して作業しますか。作業中に欠けたときの補償の上限も教えてください」と書いて、写真と鑑別書と一緒に送る
