アレキサンドライト・スピネル・パパラチアは、どれも硬く、サイズ直しや作り替えに出せる石です。気をつけるのは硬さではなく、本物かどうかと、石ごとに違う熱と処理の弱点と、預けるときの補償の3つです。
石ごとに気をつけること
3つの石は、硬さではほとんど困りません。困る所が石ごとに違います。
| 石 | 気をつけること | 作業で頼むこと |
|---|---|---|
| アレキサンドライト | 合成石が出回る | 先に鑑別 |
| スピネル | 高温で色が抜けることがある | 炎の熱を避ける |
| パパラチア | 表面近くだけ色が入った石がある | 石を磨かない |
※ 石の性質は、宝石の研究機関GIAの日本語のお手入れガイドと購入ガイドによります。パパラチアはサファイアの一種なので、サファイアのガイドで見ます。
アレキサンドライトは、硬さが8.5で、靭性が優れ、劈開がない石です。GIAは、通常の着用では熱に耐性としています。加工の作業そのものに強い石です。
スピネルはモース硬度8・靭性は良好です。ただし、GIAによると、高温で退色するスピネルがある(光・化学薬品には安定)とのことです。サイズ直しでは、バーナーの炎の熱を石にかけない直し方を頼みます。
パパラチアは、ピンクとオレンジの中間の色のサファイアの呼び名です。サファイアは硬さ9で、通常の着用では熱に耐性です。弱点は熱ではなく、色を付ける処理のほうにあります。
本物かどうかと鑑別
希少な石ほど、よく似た合成石や別の石が出回ります。合成石(人の手で作った石)でも直せますが、天然の値段のつもりで高い作り替えを頼むと、かけた費用に見合いません。鑑別書(石の種類と処理を調べた書類)がないなら、作り替えの前に取るかを決めます。
アレキサンドライトでは、GIAによると、合成アレキサンドライトは、「合成」ではなく「created」などの言葉と会社名を付けて売られることが多いです。また、「アレキサンドライト・サファイア」は、変色効果を出す微量元素を加えて作った合成サファイアを指すのが一般的です。買ったときの箱や保証書に「created」や「アレキサンドライト・サファイア」とあれば、合成の石と考えて相談します。
スピネルは、処理されていることはほとんどないが、フラクチャーがあることがあるとGIAは書いています。天然かどうかは、疑わしいときは鑑別機関のレポートで天然であることを確かめられるとされています。
パパラチアは、名前の付け方そのものに幅があります。パパラチャの定義は議論が続いており、GIAは基準を満たすと判断した場合に鑑別レポートに記すと説明されています(GIAの購入ガイド)。鑑別書に「パパラチャ」とあるかで、その石の扱いが分かります。
鑑別書で見るところ(見本)数字は仮
- ①宝石名アレキサンドライト/スピネル/サファイアパパラチアは「サファイア」と書かれ、コメントにパパラチャとあることがある
- ②天然・合成「天然」か「合成」か合成なら、作り替えの費用を石の値段と比べて決め直す
- ③処理のコメント加熱・拡散・含浸など拡散や含浸の記載があれば、熱と研磨を避けてほしいと頼む
- ④写真石の形と向き預けた石と、返ってきた石を見比べる材料にする
鑑別書を新しく作る料金は、ある鑑別機関の公開料金で2,640円(税込)、別の鑑別機関で3,850円(税込)です。後者の納期は原則として翌営業日と案内されています。鑑定書と鑑別書の違いや、すり替えを防ぐ照合の仕方は鑑定書・鑑別書の再発行とすり替えの照合で確かめられます。
鑑別の結果、合成石やよく似た別の石だったときは、ラボグロウンダイヤや模造石の指輪の直し方と同じ考え方で、直す価値を決めます。石の名前がまったく分からない指輪なら、石の種類が分からない指輪の進め方から始めます。
手元の石でどんな形にできるかは、石と枠の写真を送って工房に相談できます。
熱と処理で変わる作業

サイズ直しは、指輪の金属を切って炎でつなぐ作業です。スピネルや処理した石は、炎の熱を石にかけない直し方を頼みます。
石を外して直す
- 炎の熱が石にかからない
- ある宝飾店の説明:熱に弱い石は一度外して保護しながら作業
- 外す・留め直す代金が加わる
レーザーで直す
- 熱が狭い範囲にしか届かない
- ある工房の説明:熱に弱い石はレーザーロー付けで対応可能
- 指輪の作りによっては使えない
石を付けたまま炎で直すと言われたら、割れたときの扱いを先に聞きます。ある修理店は、石が留まったままのサイズ直しで石が破損しても補償しないと明記しています。サイズ直しの料金の決まり方は指輪のサイズ直しの料金に、外した石を留め直す爪の作業は指輪の爪と石座の修理にあります。
パパラチアでは、表面を磨く作業に気をつけます。GIAによると、市場の多くのサファイアは、加熱または格子拡散で色を変える処理がされている(ブルー・ファンシーカラーとも)とされています。格子拡散は、熱と薬品で石に成分をしみ込ませて色を変える処理です。GIAは、格子拡散処理品は再カットで色が消えることがあるとしています。
黄橙色の石には、ベリリウム拡散処理もあります。GIAは、黄橙色のベリリウム拡散処理サファイアは見分けが難しく、高度な化学分析が要ることが多いとしています。鑑別書のない石は、拡散処理の石として扱ってもらうのが安全です。
仕上げ(新品仕上げ)を頼むときは、「石の表面は磨かず、金属だけを磨いてください」と伝えます。欠けた石を磨き直す(再研磨)提案が出たら、色が抜ける恐れを聞いてから決めます。
ひびを埋めた石にも注意します。アレキサンドライトは、GIAによると通常は処理されないが、フラクチャー充填品は石鹸水のみです。スピネルについても、GIAは、超音波洗浄器・スチームクリーナーは通常安全(フラクチャーなどのインクルージョンがあると問題になることがある)としています。ひびが見える石は、仕上げの洗浄で超音波洗浄機を使わないよう頼みます。石ごとの細かな注意は宝石ごとの加工できる・できないの一覧で確かめられます。
購入店の保証を先に確かめる
ブランドや宝飾店で買った指輪なら、作業に出す前に、購入店の保証書を見ます。保証の期間内なら、サイズ直しや留め直しを購入店で受けられることがあり、ほかの店で手を入れると保証の対象から外れる場合があります。保証の条件は店ごとに違うので、保証書の記載と、購入店への問い合わせで確かめます。保証が切れている、または購入店が分からない指輪は、次の補償の確認に進みます。
高価な石を預けるときの補償
希少な石は、加工代より先に、作業中に壊れたときの補償を確かめます。補償の上限を決めている店があり、上限が石の値段に届かないことがあるからです。
ある専門店の加工承諾書では、作業中の補償は店が算出した一般的な市場価格の最大1割まで、上限30万円です。別の店の規約では、店の責任で預かり品がなくなったり壊れたりしたとき、同等品の調達、加工代金相当額、10万円のうち最も低い額を上限に弁償するとしています。持ち込んだ裸石(ルース)について、持ち込みのルースは、加工時の破損を補償しないとする店もあります。
宅配で預けるなら、配送の賠償の上限も見ます。ある宝飾店は、発送から加工中・到着まで全工程で保険適用としています。自分で送る場合、日本郵便のゆうパックをセキュリティサービスにすると、壊れたりなくしたりしたときの賠償は50万円を限度とする実損額です。石の値段がこれを超えるなら、預ける方法を相談してから送ります。送り方は宅配修理の頼み方で確かめられます。
購入したときの値段や鑑別書があれば、見積もりのときに見せます。補償の上限が石の値段に見合わないと分かれば、その作業を頼むかどうかを決め直せます。
留め直し・作り替えの費用
石を留め直すだけなら、他店の公開料金では数千円からの作業です。中石(指輪の中心の石)の石留め工賃の最低額を料金表に出している7店の中央値は、4,000円(石代別・税込と税別が混ざる)です。希少な石は、承諾書の取り交わしや留め方の手間で上がることがあります。
作り替えの公開例で、石の名前を書いたものは多くありません。ある工房は、譲り受けた1カラット以上のスピネルを、縦向きから横向きに変え、脇にメレダイヤ6石を留めた指輪に作り替えています。その料金は加工料金53,000円(税の表示なし)でした。他店の1件だけの例なので、石の大きさ・地金・脇石の数が違えば額も変わります。
| 目安にする他店の公開例 | 件数 | 額 |
|---|---|---|
| スピネルの作り替え | 1件 | 加工料金53,000円(税の表示なし) |
| ルビー・サファイアの作り替え | 7件(5店) | 中央値130,000円 |
| 色石の指輪の作り替え | 6件 | 44,000円から190,000円 |
| 中石の留め直し | 7店 | 中央値4,000円 |
※ 税込・税別・税の表示なしが混ざります。作り替えは下取りを引く前の額で、石代や下取りの扱いは公開例ごとに違います。
パパラチアはサファイアなので、ルビー・サファイアの作り替えの公開例が目安になります。アレキサンドライトの名前を書いた作り替えの公開例は、確かめた範囲では見つかりませんでした。色石の指輪の作り替えの幅を目安にし、見積もりで確かめてください。
作り替えの費用の決まり方と、パパラチア以外のサファイアの注意はルビー・サファイアの指輪のリフォームで確かめられます。石の種類ごとの注意と料金の有無は宝石別の加工可否×料金の表で確かめられます。
写真で分かること、現物で決まること
写真で決まるのは、作業の候補と見積もりの見当までです。天然か合成か、処理があるかは、写真では決まりません。
写真で分かること
- 石の留め方と枠の刻印、指輪の作り
- 鑑別書があれば、宝石名と処理のコメント
- 石を外すか、レーザーで直すかの候補
現物で決まること
- 天然か合成か、拡散などの処理(鑑別機関で調べる)
- ひびの有無と、外せる状態か
- 補償の上限と、頼むかどうか
指輪の正面・真横と、鑑別書の宝石名とコメント欄を撮って写真を送って相談すると、作業できる範囲と費用の見当を聞けます。仕様によっては費用がかかり、受けられない作業もあります。
加工を急がなくていいケース
手を入れないほうがいい場合もあります。
鑑別書があるなら、そのまま相談に進めます。鑑別書がないなら、鑑別を取ってから作り替えの予算を決めるほうが、かけた費用が無駄になりません。
今日やること
- 1鑑別書と保証書を探す宝石名・「天然」「合成」・処理のコメント、購入店の保証の期間を見る
- 2指輪を撮る正面・真横・欠けやひびが気になる所を、明るい所で撮る
- 3写真を送って相談する「アレキサンドライト(スピネル・パパラチア)の指輪を◯◯したいです。石は外して作業しますか。作業中に欠けたときの補償の上限も教えてください」と書いて、写真と鑑別書と一緒に送る
