丸くないダイヤの留め直しや枠の作り替えで難しいのは、尖った先と角です。そこが欠けやすく、爪を石の形に合わせて作る手間がかかります。既製の枠に留めるか、石に合わせて作るかで、加工代と期間が変わります。
形で変わること
丸くないダイヤのうち、欠けやすい所があるのは、尖った先や角のある形です。GIA(米国の宝石の研究・鑑別機関)は先端や鋭い角のある形のダイヤは、ほかの形より欠けやすいとしていて、例にプリンセス・マーキス・ペア・ハートを挙げています。オーバル(楕円)は挙げていません。
| 形 | 欠けやすい所 | 守り方 | 枠 |
|---|---|---|---|
| オーバル | なし※ | ふつうの爪 | 既製もある |
| ペアシェイプ | 尖った先 | 先にV字の爪 | 石に合わせる |
| マーキス | 両端の先 | 両端にV字の爪 | 石に合わせる |
| プリンセス | 4つの角 | 角にV字の爪 | 石に合わせる |
| ハート | 下の先 | 先にV字の爪 | 石に合わせる |
※ 欠けやすい所と守り方はGIAの説明によります。オーバルの「なし」は、GIAが欠けやすい形の例に挙げていない意味です。ペアシェイプは雫の形、マーキスは両端が尖った舟の形、プリンセスは正方形の形です。
GIAによると、プリンセスカットの角は劈開面に近く、欠けやすいとされています。劈開(へきかい)は、決まった向きに割れやすい性質です。角に物が当たるだけで欠けることがあるので、角を爪で覆う作りが前提になります。
尖った先と角を守る爪

尖った先や角は、V字の爪(先を包むように折れた爪)か、石の縁の一部を金属で囲む覆輪(ふくりん)で守ります。GIAも部分的な覆輪やV字の爪が、欠けやすい先端や角を守るとしています。
爪は、石の形にぴったり合わせて作る必要があります。GIAの職人向けの基準では、爪の内側が石の形に合っていないと目に見える隙間ができ、後で石が緩むとされ、V字の爪の縁は、石の形と合っている必要があるとしています。同じ名前の形の石でもカットには個体差があるので、爪の位置は石ごとに決めます。
1つでも当てはまるなら、作り替えの前に爪の直しが要ります。爪の点検と直しの料金は指輪の爪と石座の修理で確かめられます。
手元の石でどんな形にできるかは、石と枠の写真を送って工房に相談できます。
既製の枠が合う形・合わない形
店にある既製の枠(空枠)は、決まった形と大きさの石に合わせて作られています。丸くない石は、同じ形の名前でも長さと幅がそろわないので、既製の枠に合わないことがあります。持ち込みの石を枠に留める店も、石のカットには個体差があり、既製の枠に留められない場合があると説明しています。
既製の枠に留める
- 枠の見本から形を選ぶ
- 石の長さと幅が枠に合うことが条件
- オーバルは既製の枠がある店もある
石に合わせて枠から作る
- 先や角の爪の位置を石に合わせて決める
- マーキス・ペア・プリンセス・ハートはこちらが前提
- 爪を合わせる手間のぶん、加工代が上がる
ある工房は、マーキス・ハート・プリンセスなど丸以外の形のダイヤは、フルオーダー(一から作る)でのリフォームを勧めるとしていて、マーキスのような丸以外の形の石は、既製のセミオーダー(枠を選ぶ方式)では対応が難しいことが多いとも書いています。オーバルは、石を預かって既製の空枠から作る価格を出している店があり、60,000円〜(お石を預かり空枠から製作・3×4mmオーバル用)です。
枠を少し直して石に合わせる方法もあります。その場合、枠を直す代金が別にかかります。ある石留めの店は、手作りの石枠は石に合わせて地金を直すことがあり、その代金は石留めの工賃とは別にかかるとしています。
料金はどう変わるか
丸くない石は、丸い石より加工代が上がることが多いです。ある石留めの店は、丸以外の形の石を留める工賃は、丸い石より上がる(料金は問い合わせ)としています。
上がり幅は、同じ工房の公開例で比べると分かります。この工房は、丸い一粒の石と、マーキス一粒の石で、同じ作りの覆輪留めの指輪を1本ずつ作った例を公開しています。
| 同じ作りの2本 | 加工代 |
|---|---|
| 丸い一粒の指輪 | 42,000円 |
| マーキス一粒の指輪 | 46,000円 |
※ 他店の公開例。2本を重ねて着けるために同時に作った例で、税の表示なし。地金と下取りは別で、当時の価格です。
同じ作りなら、この例のように、マーキスのほうが少し高くなる程度です。差が大きくなるのは、作りが変わるときです。同じ工房の公開例を、丸い一粒の立て爪から作り替えた4件と、丸くない石を中心に作り替えた5件に分けると、次のとおりです。
| 中心の石 | 件数 | 加工代の中央値 |
|---|---|---|
| 丸い一粒 | 4件 | 57,500円 |
| 丸くない石 | 5件 | 76,640円 |
※ 他店1工房の公開例。加工代だけで、地金・足したダイヤ・下取りは別。どれも税の表示なしで、当時の価格です。
丸くない石の5件は、44,000円から180,000円まで開いています。安い例はエメラルドカット(角を切り落とした長方形)の石をシンプルな指輪にしたもので、高い例はプリンセスの周りに小さなダイヤを多く並べたものです。石の形より、周りに石を足すか、覆輪で囲むかといった作りのほうが、値段を大きく動かします。
ほかの2店の公開例では、0.49カラットのマーキスを横向きに留めた金とプラチナの指輪が100,000円、マーキスの指輪とオパールの指輪を1つのペンダントにした例が58,000円(下取り8,000円を引く前)でした。どちらも税の表示はありません。加工代・地金代・下取りを分けて見積もりを読む方法は指輪のリフォームの値段に、ダイヤと色石の留め直し・石外しの料金の幅は宝石別の加工可否×料金の表にあります。
期間は長くなることがある
丸くない石は、加工代だけでなく期間も延びることがあります。丸いダイヤは石と同じ径の穴を開けて留められますが、ある宝飾店の説明では、角やマーキスのダイヤは、ダイヤと同じ大きさと形の石座を指輪に彫り込んでから留める(丸いダイヤは同じ径の穴を開けて留められる)。同じ店は、腕のいい彫り留め職人でないとできない仕事で時間がかかり、すぐには石留めしてもらえない(納期に余裕が要る)と書いています。
記念日や式に合わせたいなら、その日付を最初に伝えて、間に合うかを聞きます。既製の枠に合うオーバルなら、枠の在庫があるかで期間が変わります。
鑑定書で見るところ
鑑定書(ダイヤの品質を調べた書類)があれば、石の形と寸法を、相談のときにそのまま伝えられます。丸くない石では、寸法の書き方が丸い石と違います。
鑑定書の見本(丸くない石で見る欄)数字は仮
- ①形・カットの様式例:ペアシェイプ・ブリリアント形の名前を伝えると、爪の置き方の見当がつく
- ②寸法例:長さ×幅×深さ(mm)長さと幅で、既製の枠に合うかが決まる
- ③重さカラット(ct)石を外す前と後で、同じ石かを見比べられる
- ④カットの総合評価丸くない石には付かない付いていなくても、石の質が劣るという意味ではない
GIAの説明では、丸以外の形のダイヤの寸法は「長さ×幅×深さ」(mm)で書かれるとされています。総合のカットの評価についても、丸以外の形のダイヤには、総合のカットグレードが付かない(GIAのレポート)とされています。
写真で分かること、現物で決まること
写真で決まるのは、形と爪の置き方の候補までです。小さな欠けと、既製の枠に合うかは、現物を見てから決まります。
写真で分かること
- 石の形と、今の爪の位置(V字の爪があるか)
- 鑑定書があれば、長さ×幅の寸法
- 既製の枠に合いそうか、石に合わせて作るかの候補
現物で決まること
- 先や角の小さな欠け・ひび
- 石と爪のあいだの隙間と、石の緩み
- 既製の枠に実際に合うか(石を外して測る)
ダイヤは硬い石ですが、GIAは劈開あり(大きな衝撃で割れることがある)としていて、石を留める作業の途中にも起こると書いています。丸くない石は先や角が欠けやすいので、外す前に石の状態を確かめます。
真上と真横の写真に、鑑定書があればその写しを添えて写真を送って相談すると、既製の枠に合いそうか、石に合わせて作るかの見通しと、加工代と地金代を分けた見積もりを聞けます。石外しの料金と割れたときの扱いの確かめ方は指輪の石外しの料金に、丸い一粒の立て爪を低い指輪にする費用は立て爪の指輪のリフォームに、外した石で新しく作る流れは石の持ち込みで指輪を作る費用にあります。
作り替えなくていいケース
形のせいで直しにくいからといって、作り替えなければならないわけではありません。
最後の場合は、外さずに爪だけを直すか、今の形のまま着ける頻度を減らすことを考えます。
今日やること
- 1石を撮る真上・真横から。尖った先や角の爪が写るように
- 2鑑定書を探す形・寸法(長さ×幅)・重さの欄を見る
- 3写真を送って相談する「◯◯の形のダイヤの指輪の枠を替えたいです。先や角の欠けを見てもらえますか。既製の枠に合うか、石に合わせて作るかで、加工代と地金代を分けた見積もりをお願いします」と書いて、写真と鑑定書の写しと一緒に送る
