インゴットや小判のような装身具でない金も、指輪やペンダントに作り替えられます。方法は、形のまま枠に入れて下げるか、溶かして新しい形に作るかの2つです。どちらにするかは、インゴットの形と刻印を残したいか、毎日着けやすい形にしたいかで決まります。
なお、大きなインゴットを小さなインゴットに分ける「分割」は、装身具にする加工とは別の仕事です。ある地金商の分割サービスは金は1gあたり209円(税込)で、200g以上のインゴットを100g単位に小分けするもので、小さなインゴットは対象になりません。
3つの方法と、残るもの
枠に入れて下げる
- 形・刻印・番号がそのまま残る
- 外せば元のインゴットに戻る
- 指輪にはできない
純金のまま溶かして作る
- 純金の色のまま身につけられる
- 柔らかく、曲がりやすい
- 刻印と形は残らない
K18にして溶かして作る
- 硬くなり、指輪にも向く
- 重さが増え、作れる量が増える
- 刻印と形は残らない
枠に入れて下げる
インゴットを傷つけずに下げたいなら、枠を使います。ある宝飾店は、インゴットを傷つけずに収める専用のペンダント枠もあると説明しています。この枠は強度のためにK18で作られることが多く、枠だけでも値が張ると同じ店は書いています。
インゴットにバチカン(チェーンを通す金具)を直接ロー付け(溶接)する方法は、選ばないでください。同じ店によると、純金に直接熱を入れると光沢が失われるおそれがあり、表面の変色や質感の変化も起きるとのことです。
もう枠に入ったインゴットなら、バチカンを替えるだけで太いチェーンにも通せます。他店の公開例では、K18の枠に入ったインゴットのバチカンを重い喜平ネックレスが通る大きさに替えて22,000円(税抜)、プラチナのインゴットのつぶれたバチカンを替えて8,000円(税別)でした。金具の替え方はペンダントのバチカン交換で確かめられます。
枠付きのインゴットを下げるのが重い、目立つと感じるなら、溶かして薄い小さなプレートにする道があります(「費用の公開例」の章)。
溶かして作る
指輪にしたい、薄く小さなペンダントにしたいなら、溶かして作ります。溶かした時点でインゴットの刻印と形はなくなり、品はインゴットではなくジュエリーになります。一部だけ装身具にして残りはインゴットのまま持っていたいなら、溶かすのはその分だけにし、「使わない地金は返してもらえますか」と先に聞きます。
純金のままか、K18にするか

純金(K24)のまま身につけるか、K18にするかは、毎日着けるかで決めます。毎日着ける指輪なら、K18が向きます。
純金は柔らかい金属です。ある宝飾店は、純金はとても柔らかく加工も難しく、ふつうに使うだけで曲がってしまうことがあると説明し、純金のままでは柔らかすぎるので、銀と銅で割って18金にするとしています。別の工房も、K24(純金)なら、割金として銀や銅などを足してK18にして使えるとしています。純金の指輪が曲がりやすい理由と直せる範囲は純金(K24)の指輪は曲がる?にあります。
K18は、純金に銀や銅などの金属を混ぜて、金の割合を下げた合金です(純度の数字はK24=999、K22=916、K20=833、K18=750、K14=585、K10=416、K9=375、K8=333(千分率))。混ぜる金属を足すので、金の量は変わらないまま、重さが増えます。
- 純金(K24)の重さ
- 10g
- 混ぜる金属を足した重さ(計算)
- 約13.3g
- 作るときの減り(仮に1割)
- 約1.3g
※ 減りの割合は仮の値です。店の公開例は「費用の公開例」の章にあります。
金の量は増えないので、K18にしても、地金としての金の価値が増えるわけではありません。手持ちの地金の価値は地金の価値計算で、刻印と重さから確かめられます。
仕上がりの純度を店が決めている場合もあります。ある宝飾店は、手持ちの地金を使うとき、金はK18に、プラチナはPt900に純度を調節して作る(K24を持ち込んでもK18で仕上がる)としています。純金の色のまま作りたいなら、純金のままで作る店に頼み、曲がりやすいことを承知のうえで選んでください。
自分の品を何に作り替えられるかは、写真を送って工房に相談できます。
費用の公開例
溶かして作るときの費用は、加工代に、足りない地金の代金を足した額です。工房や宝飾店が公式ページに載せた加工代の公開例は次のとおりです。どれも他店の例で、同じ額で作れるという意味ではありません。
| 作るもの | 他店の加工代 | 条件 |
|---|---|---|
| 平打ちの指輪(公開例1) | 55,000円〜 | 地金の持ち込み |
| 平打ち・甲丸の指輪(公開例2) | 100,000円〜 | 溶かして鍛造 |
| 甲丸の指輪(公開例3) | 70,000円(甲丸・幅3mm・9号・金属が足りる場合・1本) | 地金が足りる場合 |
| ペンダントのプレート(公開例1) | 19,800円〜 | 2gの小さな板 |
| 枠付きのバチカン交換(公開例4) | 22,000円(税抜) | 溶かさない |
※ 公開例1〜3は税込か税別かの表示がなく、公開例4は税抜です。「〜」の付いた額は、一番簡単な形の額です。
指輪の加工代は、作り方で変わります。公開例2は、溶かした地金を叩いて鍛える作り方(鍛造)の額です。彫りや文字入れは、どの例も別料金です。加工代と地金代の決まり方は指輪リフォームの値段で確かめられます。
地金が足りないときは、同じ純度の地金を足します。ある専門店は地金が足りなければ、持ち込んだ金種に準じる地金を足して作るとしています。インゴットから純金のバングルを作った例では、20gのインゴットでは幅4mm・厚み2mm・長さ14cmのバングルに少し足りず、純金を足して作ったとのことでした。
作るときの減り(目減り)も見込みます。溶かす・削る・磨く工程で地金が減るからです。ある工房は総重量のおよそ10%の減りを見込み、別の店は、元の地金を使うときに元の重さから15%を差し引いています。
完成までの期間は、ある工房で2か月程度(溶かして作る指輪の制作期間の目安)、ある宝飾店で1か月〜2か月半ほどです。
受ける純度と、溶かせない品
受ける純度は店によって違います。ある専門店はPt1000・Pt950・Pt900・Pt850・K24・K22・K20・K18なら加工できるとしていますが、別の工房が挙げる溶かせる地金はPt950・Pt900・Pt850・K18WG・K18YGだけです。
| 品 | 溶かして作る | 確かめること |
|---|---|---|
| 金のインゴット(K24) | 受ける店がある | 刻印の純度・重さ |
| プラチナのインゴット | 店による | Pt1000を受けるか |
| 小判・金杯・記念品 | 純度による | 刻印・分析の要否 |
| 国内の金貨 | できない | 枠に入れる |
プラチナのインゴットは、純プラチナ(Pt1000・Pt999)を溶かして使わない店があります。ある宝飾店は、Pt1000・Pt999・ホワイトゴールド・ピンクゴールド・K18とPtのコンビ・チェーン類は溶かして再利用できないとしています。仕様によってはできますが、受けない店もあり、費用もかかります。
純度の違う地金は、まとめて溶かせません。ある専門店も異なる金種を混ぜて加工することはできないとしています。金のインゴットとプラチナのインゴット、純金とK18の品は、別々に作ることになります。
刻印の数字の読み方は刻印図鑑で確かめられます。「K24」「999」「1000」「Pt1000」は、どれも純金・純プラチナの印です。
金歯・金メダルは使えるか
金歯や金メダルも、金の割合が分かれば材料の候補になります。ただ、どちらも金色だから金が多いとは限りません。
歯の治療に使う金属は、金以外を多く含む合金です。保険の治療で使う合金は、国の価格表で「歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品)」という名前で載っています。名前のとおり金・銀・パラジウムを混ぜたもので、決まっているのは金が12%以上という点です。
同じ価格表には「歯科用14カラット金合金(金58.33%以上)」も並んでいます。金の多い金歯でも、K14程度の合金のことがあります。K18の指輪に使うなら、金の割合が足りません。
外した金歯には刻印がなく、どの合金かは見た目で分かりません。純度を決めるには分析が要り、ある工房は不純物が混ざる・純度が低い地金は専門機関の分析が要り、分析費用がかかるとしています。ジュエリー以外の地金を受ける専門店も、金属の中に加工できない素材が含まれていると、加工を断る場合があるとしています。
金メダルも、まず刻印を見ます。「K24」「999」の印があれば純金で、インゴットと同じように溶かす候補です。「GP」の印は、日本ジュエリー協会の表示規定でGP=金めっきを表し、金は表面の膜だけです。刻印がなければ、金歯と同じく分析しないと純度が決まりません。
溶かすのが難しいメダルでも、形のまま身につける道はあります。コインをペンダントにするときと同じく、穴を開けずに枠に入れる方法です。
写真で分かること、現物で決まること
写真で決まるのは、枠に入れるか溶かすかの候補と、見当の金額までです。実際の重さと純度は、現物で確かめます。
写真で分かること
- 表と裏の刻印(純度・重さ・製造者)
- 枠に入っているか、形と厚み
- 枠に入れる・溶かすのどちらが向くか
現物で決まること
- 量った重さと、作れる大きさ
- 刻印のない品の純度(分析が要るか)
- 既製の枠に入るか
まず候補と見当の金額を知りたいなら、表と裏の刻印、量りに載せた重さ、横から見た厚みの写真で相談することができます。そのとき「形と刻印を残したいか」「指輪にしたいか」「純金のままかK18か」を書き添えると、方法を絞った案が出やすくなります。
溶かすのを急がなくていいケース
溶かすと、インゴットの形と刻印には戻せません。売るときの単価も変わります。ある地金商の公表価格では、K24製品(ロウ付あり)は1gあたり21,371円で、同じ日の地金の買取価格22,055円より低い(造幣局・他社刻印の列・2026年10月23日9時30分発表の価格)という差がありました。K18にすればさらに金の割合の分だけ下がります。迷うなら、溶かさずに枠で下げる案から考えてください。
ジュエリーの指輪やネックレスを溶かして作り替えるなら、ジュエリーを溶かしてリメイクするで、目減りの考え方と頼み方を確かめられます。
今日やること
- 1刻印と重さを確かめる刻印(K24・999・Pt1000 など)と、量りでの重さ、縦・横・厚みを控える
- 2残すか溶かすかを決める形と刻印を残すなら枠、指輪にするなら溶かす。純金のままかK18かも決める
- 3写真を送って相談する「このインゴットを、枠に入れて下げるのと、K18の指輪にするのとで、加工代と足りない地金の代金を教えてください」と書き、表と裏の刻印・量りに載せた重さ・横から見た厚みの写真を付ける
