生前にジュエリーを譲るときは、作り替えてから渡すか、そのまま渡すかを、相手の好みと指の号数が分かっているかで決めます。分からないうちに作り替えると、相手が着けない形になっても元に戻せないからです。
誰に何を渡すか
渡す相手は、品物を全部並べてから決めます。宝石箱や引き出しから出し、1点ずつ写真を撮ってから、品物の種類ごとに渡し方を考えます。
| 品物 | 渡し方 | 先にすること |
|---|---|---|
| 相手の号数に合う指輪 | そのまま | 石と爪のゆるみを見る |
| 号数の分からない指輪 | 相手に選ばせる | 渡してから直す |
| 真珠のネックレス | 直して渡す | 糸の傷みを見てもらう |
| ペンダント・ネックレス | そのまま | 留め具が弱っていないか見る |
| ブランドの品 | そのまま | 保証書・箱を探す |
| 石がぐらつく品 | 直して渡す | 石が落ちる前に留め直す |
指輪は、号数が合わないと着けられません。号数の分からない相手には、指輪のまま渡して、サイズ直しにするか作り替えるかを相手に任せます。真珠の糸や石の爪のように、使う前に直す必要がある所だけは、渡す前に直しておくと相手の手間が減ります。爪のゆるみは爪・石座の修理、留め具の傷みはチェーン修理の料金で直し方と料金を確かめられます。
相手に聞くときは、品物の写真を見せて、何がほしいかを先に聞きます。
「この中で、着けてみたいものはありますか。指輪は何号ですか。形を変えたほうが使いやすければ、それも教えてください。」
兄弟姉妹や孫が何人かいるときは、1人ずつ選んでもらいます。数が足りないときや、1つの品を分けたいときは、作り替えで分けられます(下の公開例)。
作り替えてから渡すか、そのまま渡すか
作り替えるか迷ったら、相手が「この形なら毎日着ける」と言った場合だけ作り替えます。相手の言葉がないまま、譲る側の好みで作り替えないでください。
作り替えてから渡す
- 相手が形と号数を伝えてくれた
- 一緒に店で形を決められる
- 渡したその日から着けられる
そのまま渡す
- 相手の好みや号数が分からない
- 元の形を残したい品
- 直し方は相手が後で選べる
指輪をネックレスに作り替えてから渡す方法は、号数の問題がなくなります。母から譲られた指輪について、譲るときにサイズ直しが要らないよう、指輪をネックレスにした公開例もあります。いずれ娘や孫に渡すつもりなら、指輪よりネックレスのほうが、受け取る人を選びません。
分けた・作り替えた公開例
他店の工房が公開している、家族の品を分けたり、譲りやすい形に作り替えたりした例です。同じ金額で作れるという意味ではありません。
| 元の品 | どうしたか | 費用 |
|---|---|---|
| 小さなダイヤ60石の指輪 | 半分を親戚に譲り、30石で指輪に | 108,000円(下取り前) |
| 5石の指輪 | 3石は指輪、2石はピアスに | ピアス分162,800円(税込) |
| 父の大きな印台の指輪 | 娘が受け継ぐ小さなネックレスに | 記載なし |
| 母から譲られた指輪2本 | 譲りやすいようネックレスに | 記載なし |
※ 1行目は元の枠の下取りを引く前の額で、税の表示はありません。2行目は、5石の指輪を、3石は指輪・2石はピアスに分けた例で、指輪の分が別にかかります(税込)。3行目は、古い印台を下取りして費用を抑えた例です。
石がいくつも付いた品は、石を分けて2人に渡せます。石の分け方と費用は2つの指輪を1つにリメイクする費用とメレダイヤのリメイクで確かめられます。
直すときの費用
工房や宝飾店が公式サイトに出している「〜から」の料金を集めた中央値です。他店の公開料金の集計で、同じ金額でできるという意味ではありません。
| 直し方 | 料金の中央値 |
|---|---|
| 指輪のサイズを小さく(8店) | 2,500円〜 |
| 指輪の石でペンダントに(8店) | 30,000円〜 |
| 指輪の石で別の指輪に(16店) | 67,500円〜 |
| 真珠ネックレスの糸替え(8店) | 2,400円〜 |
| 石の種類を調べる(鑑別) | 3,850円(税込) |
※ 税込・税別・税の表示なしが混ざります。ペンダントはチェーン別、作り替えは元の枠の下取りを引く前です。鑑別は1つの鑑別機関の税込の料金です。
サイズ直しや糸替えは数千円から、作り替えは数万円からです。サイズ直しの料金に何が加わるかは指輪のサイズ直しの料金と日数で確かめられます。
自分の品を何に作り替えられるかは、写真を送って工房に相談できます。
本物か、いくらの価値かを確かめてから渡す
受け取る側が後で困るのは、「本物か」「いくらの価値があるか」が分からないことです。渡す前に、石と地金を分けて確かめます。
- 石:鑑別機関で鑑別書を作ってもらいます。ある鑑別機関によると、鑑別書は宝石の種類を科学的に特定した証明書です。値段を付ける書類ではありません。手順は鑑定書・鑑別書は再発行できる?にあります。
- 地金:内側の刻印(Pt900・K18など)と重さが分かれば、地金の価値計算で目安を出せます。この価格で買い取られるという意味ではなく、直す価値があるかを考える材料です。
工房で分かるのは、地金の種類や石の種類など、品物のことです。売ることも考えているなら、売る前に家族に写真を見せて、ほしい人がいないかを聞きます。売った品は戻りません。
写真で分かること、現物で決まること
譲る前に直すかを決めるとき、写真で聞ける範囲を知っておくと、店に持ち込む回数が減ります。
写真で分かること
- 作り替えの候補と、見当の金額
- 刻印の文字(地金の種類)
- 真珠の糸の伸び、留め具の形
現物で決まること
- 石のぐらつきと、爪の下の欠け
- 真珠やオパールの劣化の度合い
- 地金の重さと、下取りの額
相手と形が決まったら、品物の正面・横・内側の刻印の写真に、相手の号数を添えて写真を送って相談すると、作り替えの形と税込の総額の目安を聞けます。石の状態と下取りの額は、現物を見てから決まります。
本人にしか残せないもの

譲る本人が元気なうちに済ませたいのは、由来の書き残しと書類探しです。素材や石の種類は後からでも調べられますが、いつ・何の記念に買ったかは本人しか知りません。
1点ごとに書き残すこと
- ①品名例:ダイヤの指輪(Pt900)内側の刻印も書き写す。読めなければ写真を貼る
- ②由来いつ・どこで・何の記念か婚約指輪だった、などの一言が、何を残すかの手がかりになる
- ③書類鑑定書・保証書・箱のある場所品物と書類を同じ袋に入れておく
- ④渡したい人名前と、その人を選んだ理由家族で分けるときに迷わない
- ⑤直し方形を変えてよいか「好きに作り替えてよい」と書いてあれば、受け取った人が迷わない
自治体が配るエンディングノートにも、宝飾品を書く欄があります。埼玉県飯能市のノートは、宝飾品などの内容と、誰に譲りたいかを書いておくよう案内しています。
ただし、ノートは希望を伝えるためのものです。同じノートにも、ノートは遺言書と違って、法的な効力はないと書かれています。高価な品を特定の人に確実に渡したいなら、遺言の作り方を専門家に確かめてください。
鑑定書は本人が探す
鑑定書や鑑別書は、譲る本人が探しておきます。なくしていても、再発行を頼めるのは本人だけの機関があるからです。ある鑑別機関は、再発行は、その機関に鑑別・鑑定を依頼した本人からの依頼に限るとしています。
再発行の料金は、その機関で鑑定書・鑑別書とも1,650円(税込)、別の機関のグレーディングレポートで1冊1,100円(税込)です。再発行できる期間に決まりがある機関もあります。
贈与の考え方
ジュエリーも、生きているうちに渡せば贈与になります。贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。
税がかかるかどうかの判断は、税務署か税理士に聞きます。
作り替えないほうがいい品
加工で傷みやすい品は、作り替えずにそのまま渡します。ある工房は、ひびのあるオパール、経年劣化で脆くなった真珠、琥珀・サンゴ・カメオ・象牙・エメラルドなどを、加工で壊れやすい品に挙げています。同じ工房の決まりでは、加工中に壊れたときの補償は店が算出した一般的な市場価格の最大1割まで、上限30万円です。思い出の品は、お金では戻りません。
亡くなった後に家族が仕分ける流れは形見のジュエリーをどうするか、受け取った側が直すときは母や祖母から譲られた指輪を自分用に直すにあります。
今日やること
- 1全部を並べて撮る1点ずつ、正面・横・内側の刻印を撮り、鑑定書や保証書を同じ袋に入れる
- 2渡したい人に聞く写真を見せて「着けてみたいものはありますか。指輪は何号ですか」
- 3写真を送って聞く「子(孫)に譲る前に作り替えたいです。相手の号数は◯号です。この形にできるかと、税込の総額を教えてください」と書いて、正面・横・刻印の写真と一緒に送る
